


日韓経済連帯で世界秩序をつくる役割へ進む「拡張オプション」の提案
ソウル大学経済学部(イ・ジョンミン学部長)は11月5日(木)、同学部の在学生ら450人余りが出席する中、SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長による「人工知能(AI)時代、世界経済パラダイムの変化と大韓民国のビジョン」をテーマとした特別講義を開いた。崔会長が同学部の学生と会うのは、2022年4月の特別講義「市場の変化、未来の企業」以来、約4年半ぶりとなる。
崔会長は講義の冒頭、「30年以上企業を経営し、『変化』には慣れているが、その速度と規模は過去と比べものにならないほど増している」と切り出した。
当日、崔会長は、①AI時代を迎える経済秩序の変化、②米中中心に変化したパラダイムと覇権、③複数の産業で同時に革命が起きる巨大なスケールの「AI」、④さまざまな内外の問題に直面する韓国経済の解決策などをテーマに考えを共有した。
崔会長は、現在のAI時代について、経済学の市場原理や従来のモデルだけでは説明しきれないほど変数が増えたと分析した。かつては需要と供給を中心に市場を理解していたが、デジタル経済では個々の顧客との関係が重要になるなど、経済が機能する仕組みそのものが変化したと強調した。米国と中国を中心としたグローバル経済秩序の構造的変化に注目し、過去30年間にわたり米国の消費と中国の製造を軸に維持されてきたグローバルな分業構造が変わりつつある中、韓国は米国の投資要求と中国の技術的な追い上げという二重の困難に直面しているとの見方を示した。
崔会長は、AI産業革命がもたらす変化の規模と速度についても強調した。AI分野では、これまでに例を見ない規模の巨額資本が投入される投資競争が繰り広げられており、今後はAIを中心に複数の産業でイノベーションが同時に起こり、互いに影響を及ぼし合うだろうと見通した。
これに立ち向かわなければならない韓国経済の状況については、「低成長や債務増加などで内部の基礎体力が弱まった中、G2(米中)の覇権争いやAI革命、資本戦争による外部からの脅威まで加わった」と述べた。そのため、個別の懸案への対応だけでは複合的な経済・社会問題の解決は難しく、内外の変化を総合的に考慮する新たなアプローチが必要だと指摘した。
こうした分析を踏まえ、崔会長は、①社会問題の解決がそのまま経済活動となる「ニュー・キャピタリズム(新資本主義)」、②知能の輸出国へと飛躍する「AIネイティブ国家」、③日韓経済連帯によって世界秩序をつくる役割へ進む「拡張オプション」、④経済成長を促進する「インセンティブ・システム」の4つの解決策を提案した。
崔会長は、ニュー・キャピタリズムの例として「社会的価値」を挙げた。「民間が利益を生み出して納めた税金で、政府が国防や福祉などの社会サービスを提供する構造は、社会の急速な多様化・複雑化の中で、現在の仕組みでは限界にぶつかっている」として、社会問題を解決する民間の「善行」に、社会が金銭的に報いようという考えである。
米エヌビディアのジェンスン・フアン創業者兼最高経営責任者(CEO)が示した「AIの5層(エネルギー、半導体、AIデータセンター、大規模言語モデル(LLM)、アプリケーション)」を紹介しながら、「『AIネイティブ国家』を目指すために競争力を高めるべき分野だ」として、グローバルなAIエコシステムで韓国が発言力を持てるよう、動ける余地を確保すべきだと訴えた。
米中のグローバル競争で生き残るための韓国経済の拡張オプションとしては、日韓経済連帯を強調した。崔会長は「自由貿易体制が弱まる中、国内総生産(GDP)2兆ドルの韓国と4兆ドルの日本の経済が結びつけば、その波及効果は単純に3倍ではなく、それ以上に大きくなり、両国が抱える少子化や高齢化などの社会的コストを減らせるだろう」と述べた。
「インセンティブ・システム」については、かつての高度成長期の成長モデルを刷新し、企業が成長を続けられるよう促すものだと付け加えた。小規模な企業が規制を避けるために大企業への成長を自ら諦めないようにしてこそ、韓国経済が持続的に成長し、民主主義とともに韓国を支える柱の一つである資本主義が健全に機能できるという説明である。
崔会長は講義後、学生から質問を受け、AI、半導体、エネルギーなど経営の現場で得た自らの経験や考えを共有した。
質問者が「社会は個人にAI能力を求め、企業でもAIを実務で多く活用している」と述べたうえで、崔会長が考えるAI人材育成の方向性を尋ねたのに対し、崔会長は「経験」を挙げた。「どこでも学べるものではなく、自ら新しいものを自由に設計しながら経験することが、『AIネイティブ国家』に向かう基礎になる」と述べ、「以前の試みが失敗しても、それを経験とし、挑戦を続ければ『システム』ができあがる」と語った。
ソウル大学経済学部のイ・ジョンミン学部長は「世界のAI産業を最前線で牽引する崔泰源会長の洞察を分かち合い、学生が教室で学んだ経済学の概念を実際の経済の現場に結びつけて考えてみる機会になったことを願う」と述べた。